1台のクルマに、なぜ強制加入の「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険の略)」と任意加入の「自動車保険」の2つの保険が必要なのかという質問を受けることがあります。
簡単に申し上げますと、相互補完関係にある2つの保険をセットで加入してはじめて「自動車保険」としての機能が果たされるためで、自賠責保険だけでは十分な「補償」とは言えないからです。
自賠責保険は、「自動車損害賠償保障法(自賠法)」という法律で、全てのクルマに加入を義務づけている保険です。日本国内で自動車を運転する限り、この自賠責保険が付いていないと法律違反として検挙されてしまいます。
これに対して、任意の自動車保険は民間の保険会社が個々に引き受けしている保険で、加入するしないは個人が任意に決める保険です。万一の自動車事故の際に負担しなければならない高額の賠償に備えることを主な目的としています。
このような2段階式の自動車保険制度になった背景には、戦後の急激なモータリゼーションがあります。日本で自動車が普及し始めた頃は「クルマを買ったら自動車保険にも加入しなければ」という意識が希薄で、無保険のクルマが多かったため、自動車事故の際に被害者が十分な補償を受けられないケースが多発しました。
こうした自動車事故の被害者を救済するために、必要最低限の補償の提供を目的に、国が法律を作って制度化したのが自賠責保険です。補償の内容は対人賠償に限られており、その補償額も決して大きなものではありません。
その後、日本の経済が高度成長期に入り国民の所得が増えるとともに、交通事故の際の賠償額も高額化の一途をたどり、自賠責保険だけでは賄いきれないケースが増えてきました。そこで生まれたのが任意の自動車保険です。
「自賠責保険の上乗せとして対人賠償の不足分を補う」と同時に、「自賠責保険では補償されない対物賠償や、自分自身のケガ・自分のクルマの損害に対する補償を行う」ための保険が必要となったというわけです。